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【完全ガイド】相続放棄した実家の管理義務とは?費用・メリット・相続財産管理人まで徹底解説
親が亡くなったときに必ず直面する「実家」の問題。
築年数が古く、住む予定もない、売っても値がつかない…。そんなときに選択肢となるのが相続放棄です。
「相続放棄をすれば、もう完全に無関係になれる」と思っていませんか?
実は、相続放棄をしても“実家の管理義務”が残るのです。
この記事では、
- 相続放棄後の管理義務とは何か
- 具体的にどこまで管理が必要か
- 管理にかかるお金や期間
- メリットとデメリット
- 相続財産管理人は誰がなるのか
を、法律に基づきながらわかりやすく解説します。
「相続放棄した実家ってどうなるの?」と疑問に思っている方はぜひ最後までご覧ください。
相続放棄しても「管理義務」は残る
まず押さえておくべきは、民法940条のルールです。
相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされる。ただし、次に相続人となる者が管理を開始できるまで、自己の財産と同じ注意をもって管理しなければならない。
つまり、
- 相続放棄した人は「相続人ではない」扱いになる
- しかし「次の相続人」や「国」が正式に引き継ぐまでの間は、つなぎとして管理する義務がある
ということです。
「放棄したのに責任があるの?」と感じる方も多いですが、放置して倒壊・火災・不法投棄などが起きれば周囲に迷惑をかけるため、法律で最低限の管理を義務付けているのです。
管理義務の範囲:どこまでやればいい?
管理義務は「財産を増やす」ような積極的なことまでは不要です。
ポイントは周囲に迷惑をかけないための最低限の維持。
実家(空き家)の場合
- 戸締まりをして侵入や放火を防ぐ
- 草木が伸びすぎないよう定期的に手入れ
- 崩落や雨漏りで近隣に危険がないよう応急処置
農地や山林の場合
- 不法投棄や不法耕作を防ぐ
- 害虫・害獣による被害が広がらないよう見回り
借地権の場合
- 地代を払う義務はなし
- ただし地主へ「相続放棄済み」と伝えておくのが望ましい
ポイントは「放棄したのだから維持費をかける必要はないが、放置で迷惑をかけないよう最低限の管理は必要」という点です。
管理にかかる費用
相続放棄をしても、管理には一定のお金がかかります。
典型的な費用例
- 空き家の草刈り・清掃:年間数万円〜
- 簡易修繕(雨漏り・瓦の落下防止など):数千円〜数万円
- 空き家管理サービス委託:月1〜2万円程度
固定資産税は?
- 相続放棄をした人には固定資産税の納税義務はありません。
- ただし自治体から請求書が届く場合があるので、「放棄済み」と通知しておくとスムーズです。
誰が負担するのか?
管理費用は一時的に放棄者が立て替えますが、後に相続する人や相続財産から精算できる仕組み(民法941条)があります。
管理義務はいつまで続く?
「次の相続人」や「国」が管理を引き継ぐまでです。
順番は次のようになります。
- 放棄した人の次順位の相続人(例:兄弟姉妹、甥姪など)
- みんな放棄 → 家庭裁判所が相続財産管理人を選任
- 最終的に誰もいない場合 → 国庫に帰属
つまり、短ければ数週間で解放されますが、長いと1年以上管理し続けるケースもあります。
相続財産管理人という選択肢
「遠方で管理できない」「負担が大きすぎる」場合は、家庭裁判所に申し立てて相続財産管理人を立てることができます。
相続財産管理人の役割
- 財産を調査・管理
- 必要なら財産を売却し、債権者へ配当
- 最後に残った財産を国庫へ引き渡す
まさに「相続人がいないときの清算人」です。
誰がなるのか?
- 多くの場合、弁護士や司法書士などの専門家
- 親族が管理人になるケースはほぼありません
費用
- 裁判所への申立手数料:数千円
- 予納金:20万〜100万円程度(財産の規模による)
この予納金は申立人が一時負担する必要があるため、放棄を考えている人には大きなハードルです。
相続放棄+管理義務のメリット・デメリット
メリット
- 借金や負債を背負わなくて済む
- 財産を所有しないため将来の固定資産税や修繕費から解放
- 管理義務は一時的で、永続するものではない
デメリット
- 一定期間は管理が必要
- 費用を一時的に立て替える必要がある
- 遠方だと労力・交通費が大きな負担
- 相続財産管理人の申立てには高額な予納金が必要
実際に起きやすいトラブル事例
- 空き家が倒壊寸前で近隣から苦情 → 放棄した人が応急修繕を余儀なくされた
- 市役所から固定資産税の請求 → 放棄済みを説明してようやく解決
- 疎遠な兄弟姉妹が相続放棄に応じず管理が長期化
- 管理人を立てたが予納金に50万円かかり、経済的に大打撃
まとめ:相続放棄しても「管理ゼロ」にはならない
相続放棄をしても、実家や土地について“次の相続人が引き継ぐまでの管理義務”が残ります。
- 最低限の管理(草刈り・戸締まりなど)が必要
- 費用は一時的に負担し、後に精算可能
- 長期化することもあるので「管理人を立てる」選択肢もある
相続放棄を考えるときは、「放棄する」ことと「管理義務をどう果たすか」をセットで検討するのが大切です。