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田舎の相続で「売れない土地」をどうする?相続放棄の落とし穴と国庫帰属制度の活用法
はじめに
「親から相続したけれど、田舎の土地なんていらない」「売りたくても買い手がいない」「固定資産税だけが毎年かかって苦しい」——こんな声は年々増えています。少子高齢化や人口減少が進む中、地方の土地は需要が低くなり、相続したところで持て余すケースが非常に多いのです。
しかし、単に「相続放棄すれば大丈夫」と考えてしまうのは危険。実際には、相続放棄には落とし穴があり、土地を手放すのは思った以上に難しいのです。本記事では、田舎の不要な土地をめぐる問題点と解決策を、最新の「相続土地国庫帰属制度」も含めてわかりやすく解説します。
1. 田舎の土地が「売れない」現実
都市部の不動産は需要が高く、買い手が見つかりやすいですが、地方や過疎地域では状況が一変します。
- 交通の便が悪い:駅から遠い、バスも通っていない。
- 利用価値が低い:農地や山林は一般人には使いづらい。
- 維持費が重い:草刈りや倒木の管理、固定資産税の負担。
その結果、相続しても「売れない土地」になりがちです。地元の不動産業者に相談しても「値がつかない」「仲介できない」と断られることも珍しくありません。
2. 相続放棄すれば解決?——実は落とし穴だらけ
(1)相続放棄の基本
- 相続放棄をすると、最初から相続人ではなかったことになります(民法 939 条)。
- そのため、土地の所有権も引き継がず、固定資産税も払わなくてよいことになります。
一見すると完璧な解決策に思えますが……。
(2)放棄の裏側にあるリスク
- 他の相続人に負担が移る
兄弟や親族に土地の処分が回り、トラブルの原因になる。 - 相続人がいない場合の管理責任
放棄した人も、国に引き渡されるまで最低限の管理義務を負う場合があります(民法 940 条)。 - 国に移るまでの空白期間
最終的に相続人が誰もいなくなれば国庫に帰属しますが、その間は家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任し、手続きに数十万円の予納金がかかることもあります。
つまり、相続放棄は「すぐに土地問題から解放される魔法の手段」ではないのです。
3. 売れない土地の現実的な解決策
(1)地元の不動産業者に相談
大手の業者では扱ってくれない土地でも、地元業者なら買い手が見つかるケースもあります。また、隣地の所有者が取得に前向きなこともあるため、まずは複数の窓口に相談するのが大切です。
(2)空き家バンク・農地バンクに登録
自治体が運営する制度を通して、移住希望者や農業を始めたい人とマッチングできる場合があります。無料または低コストで登録できるので活用価値大です。
(3)寄付や無償譲渡
自治体や NPO が受け取ってくれるケースもありますが、自治体も不要な土地を抱えたくないため、簡単には受け入れてくれません。ただし公共事業や地域活性に合致すれば受け入れの可能性はあります。
4. 最後の切り札「相続土地国庫帰属制度」
2023 年 4 月からスタートした新制度が「相続土地国庫帰属制度」です。これは、不要な土地を法務局を通じて国に引き渡せる仕組みです。
(1)利用条件
- 建物が建っていないこと
- 境界が明確で争いがないこと
- 有害物質や土砂崩れなどの危険がないこと
これらの条件をクリアすれば申請可能です。
(2)費用
- 申請手数料:14,000 円
- 負担金:土地の種類ごとに一筆あたり 2 万円~20 万円程度(原野や山林は高め)
(3)メリット
- 一度国に引き渡せば、固定資産税も管理責任も完全にゼロになる。
- 相続放棄のように「空白期間」が発生しない。
(4)デメリット
- 条件が厳しい:建物がある土地、境界が不明確な土地、隣地との紛争がある土地などは対象外。
- 費用がかかる:申請手数料や負担金は数万円~数十万円。広大な山林などでは高額になる。
- 審査に時間がかかる:申請から審査完了まで半年~1 年以上かかることもある。
- すべての土地で利用できるわけではない:利用条件を満たさない場合、結局は自分で処分方法を探さなければならない。
このように「国庫帰属制度」は確実に土地問題を終わらせる強力な制度ですが、万能ではなく、利用できないケースも多い点には注意が必要です。
5.相続放棄と国庫帰属制度の比較
| 項目 | 相続放棄 | 国庫帰属制度 |
|---|---|---|
| 手続き窓口 | 家庭裁判所 | 法務局 |
| 他の財産も放棄? | すべて放棄 | 土地のみ手放せる |
| 負担金 | 不要だが管理責任あり得る | 数万円~数十万円 |
| 最終的な安心度 | △(国庫に移るまで空白あり) | ◎(国に引き渡して終了) |
| 利用条件 | なし | 厳しい条件あり |
6. まとめ
田舎の「売れない土地」をめぐる相続問題は、放っておけば固定資産税や管理負担が積み重なり、将来の子ども世代にも迷惑をかけます。相続放棄には落とし穴があり、必ずしも即座に問題が解決するわけではありません。
一方で、2023 年から始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用すれば、条件や費用は必要ですが、確実に土地を手放し、将来の負担を断ち切ることが可能です。ただし、制度には利用条件や費用負担といったデメリットもあるため、事前にしっかり確認する必要があります。
不要な土地に悩んでいる方は、まずは地元の不動産業者や自治体に相談し、それでも解決しない場合には「国庫帰属制度」を検討するのが現実的な選択肢といえるでしょう。









