相続人に行方不明者がいる場合の解決策:2つの制度とその他方法

    相続人に行方不明者がいる場合、遺産分割協議を進めることができず、相続手続きに大きな支障をきたします。しかし、諦める必要はありません。本記事では、行方不明者がいる場合の解決策として、2つの制度とその他方法について詳しく解説します。

    1. 不在者財産管理人制度

    不在者財産管理人制度は、行方不明者の財産を管理し、代表する制度です。行方不明者が生存している場合でも、本人の意思表示が得られないため、不在者財産管理人が代理人として遺産分割協議に参加したり、遺産の管理や処分を行ったりすることができます。

    1.1 不在者財産管理人の選任要件

    不在者財産管理人を選任するには、裁判所が定める要件を満たす必要があります。代表的な要件は以下の通りです。

    • 行方不明者が一定期間以上音信不通であること:一般的には7年以上とされていますが、個々の事情を総合的に判断されます。

    • 不在者財産管理人となる者が、行方不明者と利害関係があること:相続人であること以外にも、債権者や共同名義人など、不在者の財産に関わる利害関係があれば選任される可能性があります。

    • 不在者財産管理人となる者が、その職務を適正に遂行する能力があること:財産管理の経験や知識、責任感などが求められます。

    1.2 不在者財産管理人の選任手続き

    不在者財産管理人を選任するには、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任申立書」を提出する必要があります。申立書には、裁判所が定める必要事項を記載する必要があります。

    1.3 不在者財産管理人の役割

    不在者財産管理人には、以下の役割があります。

    • 不在者の財産を管理する:財産の保全、収益の確保、必要経費の支払いなどを行います。

    • 不在者の財産について、必要な処分を行う:不動産の売却、預貯金の解約、借金の返済などを行います。

    • 遺産分割協議に参加する:不在者の財産に関する遺産分割協議において、不在者の利益を代表します。

    • 不在者に関する訴訟を提起する:不在者の権利を侵害する行為に対して、訴訟を提起することができます。

    1.4 不在者財産管理人の報酬

    不在者財産管理人は、その職務に対して報酬を受けることができます。報酬額は、裁判所が定めます。

    2. 失踪宣告制度

    失踪宣告制度は、家庭裁判所が行方不明者を死亡したものとみなす制度です。失踪宣告がされると、行方不明者は民法上死亡したものとみなされ、相続人以外の者にも遺産分割の権利が発生します。

    2.1 失踪宣告の要件

    失踪宣告を受けるには、裁判所が定める要件を満たす必要があります。代表的な要件は以下の通りです。

    • 行方不明者が一定期間以上音信不通であること:一般的には7年以上とされていますが、個々の事情を総合的に判断されます。

    • 失踪宣告を申立てる者が、行方不明者と利害関係があること:相続人であること以外にも、債権者や共同名義人など、不在者の財産に関わる利害関係があれば申立てられます。

    2.2 失踪宣告の手続き

    失踪宣告を受けるには、家庭裁判所に「失踪宣告申立書」を提出する必要があります。申立書には、裁判所が定める必要事項を記載する必要があります。

    2.3 失踪宣告の効果

    失踪宣告がされると、以下の効果が発生します。

    • 行方不明者は、民法上死亡したものとみなされる:相続、婚姻、親権など、民法上の様々な権利・義務が発生します。

    • 不在者の配偶者は、再婚することができる

    • 不在者の財産は、相続法に基づいて分割される

    3. その他の方法

    上記以外にも、行方不明者の住所を調査したり、公示送達を利用して連絡を取ろうとしたりするなどの方法があります。

    4. まとめ

    相続人に行方不明者がいる場合、遺産分割協議を進めることが困難になります。しかし、不在者財産管理人制度や失踪宣告制度を利用することで、解決することが可能です。