相続対策にて・・・先ずは何から手をつけるべきか。

    相続対策を考える際、何から手を付けるべきかは非常に重要なテーマです。適切な対策を早めに講じることで、相続時に生じるトラブルや負担を軽減することができます。この記事では、相続対策を始める際にまず取り組むべきステップについて、わかりやすく解説します。

    1. 家族と話し合うことから始める

    相続対策を始めるにあたって、最も重要なのは家族との話し合いです。相続に関する問題は、家族間の人間関係に深く関わるため、話し合いが不足すると後々トラブルの原因となります。まずは、家族全員が納得できる形で相続を進めるために、相続に関する基本的な考え方や希望を共有しましょう。

    話し合う際のポイント

    誰が何を希望しているかを確認する

    それぞれの家族がどのような資産を望んでいるのか、またどのように相続を進めたいかを話し合います。例えば、特定の不動産を相続したいと希望する者がいる場合、その意向を尊重しつつ全体のバランスを考慮する必要があります。

    感情面も考慮する

    相続は単に財産分与の問題だけでなく、感情的な側面も含まれます。親が築いてきた財産をどう分けるかは、家族全員にとって感情的に大きな問題です。このため、単なる金額や物理的な分割だけでなく、感情的な負担が少ない形を模索することも重要です。

    2. 資産の現状を把握する

    次に行うべきは、自分自身や親が所有している資産の現状を正確に把握することです。これには、不動産、預貯金、有価証券、保険、借金など、全ての財産が含まれます。資産の現状を正確に把握することで、相続時にどの程度の財産があるのか、またどのように分配するのが最適かを考える基礎ができます。

    資産把握の方法

    不動産の評価

    不動産は、相続において大きなウェイトを占めることが多いため、その評価額を把握することが重要です。公的な評価額である固定資産税評価額や路線価を確認し、必要に応じて不動産鑑定士による評価を依頼することも考慮すべきです。

    金融資産の整理

    預貯金や有価証券、保険などの金融資産は、すぐに把握できるように整理しておきます。どの銀行にどれだけの預金があるか、どの証券会社でどの株式を保有しているかなど、一覧表にまとめると良いでしょう。

    借金やローンの確認

    相続においては、資産だけでなく負債も引き継がれるため、借金やローンの状況を確認することが重要です。どの金融機関からどの程度の借り入れがあるのか、返済計画がどうなっているのかを把握しておきます。

    3. 遺言書の作成を検討する

    遺言書の作成は、相続対策の中でも非常に重要なステップです。遺言書を作成することで、相続人間でのトラブルを未然に防ぎ、財産を希望通りに分配することが可能となります。遺言書がない場合、法律に基づいた相続が行われるため、必ずしも本人の希望が反映されないことがあります。

    遺言書作成のポイント

    遺言書の種類

    遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。一般的に、公正証書遺言が信頼性が高く、相続時の手続きがスムーズに進むため、おすすめです。

    遺留分の考慮

    遺言書で全財産を特定の相続人に渡すことも可能ですが、他の相続人には遺留分と呼ばれる最低限の取り分が法律で保障されています。このため、遺言書を作成する際には、遺留分に配慮した内容とすることが重要です。

    専門家のアドバイスを受ける

    遺言書の作成は法律的な知識が必要であり、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。弁護士や行政書士、税理士に相談し、適切な内容の遺言書を作成することで、相続時のトラブルを避けることができます。

    4. 生前贈与を活用する

    生前贈与は、相続税対策として非常に有効な手段の一つです。生前に一定の財産を子供や孫に贈与することで、相続時の課税対象となる財産を減らすことができます。特に、毎年110万円までの贈与は贈与税がかからないため、長期間にわたって少しずつ贈与することで、大幅な節税効果が期待できます。

    生前贈与の注意点

    計画的な贈与

    生前贈与は、計画的に行うことが重要です。一度に大きな額を贈与すると、贈与税が高額になるため、少しずつ贈与することが効果的です。また、贈与を受けた側が適切に財産を管理できるよう、教育やサポートも必要です。

    特定贈与の活用

    教育資金贈与や住宅資金贈与など、特定の目的に使う場合には、一定額まで非課税となる特例があります。これらの特例を活用することで、さらに効果的な節税が可能です。

    贈与の記録を残す

    贈与を行った際には、贈与契約書を作成するなど、贈与の事実を証明できる記録を残しておくことが大切です。相続時に贈与があったことが明らかになれば、相続税の対象となることがあるため、贈与の時点で適切な手続きを行っておくことが必要です。

    5. 相続税の試算を行う

    相続税の負担を軽減するためには、まず相続税がどの程度かかるのかを試算することが重要です。相続税の計算には、基礎控除額や各種控除、特例が関わってくるため、専門家に相談しながら詳細な試算を行うことをおすすめします。

    相続税試算の基本ステップ

    基礎控除額の確認

    相続税には基礎控除額があり、これを超える部分に対して課税されます。2024年現在、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 相続人の数」となっています。この基礎控除額を超える場合に、相続税が発生します。

    財産評価額の計算

    相続財産の評価額を計算し、どの程度の相続税が発生するかを試算します。不動産、株式、預貯金など、それぞれの財産の評価方法が異なるため、正確な試算を行うためには、専門家の協力が不可欠です。

    各種控除や特例の適用

    相続税には、配偶者控除や小規模宅地等の特例など、さまざまな控除や特例があります。これらを適用することで、相続税の負担を大幅に軽減することが可能です。

    6. 専門家との連携を強化する

    相続対策は法律や税制に関する専門知識が必要であり、個人で全てを行うのは難しいことが多いです。そこで、相続対策を効果的に進めるためには、専門家との連携を強化することが不可欠です。

    専門家の役割

    弁護士

    相続に関する法律問題を扱う弁護士は、遺言書の作成や相続人間の紛争解決、法的な手続きのサポートなどを行います。特に、家族間での意見の食い違いやトラブルが予想される場合、早めに弁護士に相談することで、スムーズな解決が期待できます。

    税理士

    相続税の計算や申告手続きは、税理士が担当します。税理士は相続税の節税対策についてもアドバイスを提供し、生前贈与や各種控除の活用方法について提案します。特に、財産の評価や税務処理が複雑な場合、税理士のサポートは欠かせません。

    司法書士

    不動産の名義変更や遺言書の作成支援などを行う司法書士も、相続対策において重要な役割を果たします。遺言書を公正証書遺言として作成する場合や、相続登記の手続きを行う際には、司法書士が必要です。

    不動産鑑定士

    相続財産に不動産が含まれる場合、その評価は非常に重要です。不動産鑑定士に依頼することで、公正で適切な評価額を算出し、それを基にした相続税の試算や遺産分割の計画が立てやすくなります。

    行政書士

    相続手続きのサポート、例えば戸籍の収集、相続人の確定、財産目録の作成のお手伝いができます。更に遺言書の作成支援や遺産分割協議書の作成など多岐にわたり精通しています。相続を専門のとする行政書士に依頼することで手続きの負担を軽減し、迅速かつ効率的に相続を進めることができます。

    専門家との連携方法

    早めに相談を始める

    相続対策は時間がかかることが多いため、できるだけ早めに専門家に相談を始めることが重要です。時間的な余裕を持つことで、より効果的な対策を講じることができます。

    複数の専門家と連携する

    相続対策には、法律、税務、不動産評価など多岐にわたる専門知識が必要です。これらの分野に精通した複数の専門家と連携することで、総合的なアプローチが可能になります。例えば、行政書士と税理士、不動産鑑定士が協力し、最適な相続プランを提案することができます。

    定期的な見直し

    相続対策は、一度決めたら終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。法律や税制が変わることもあるため、その時々の状況に応じて対策をアップデートする必要があります。専門家と定期的にコミュニケーションを取り、必要に応じてプランを修正していくことが大切です。

    7.保険の活用を考える

    生命保険は、相続対策として有効な手段の一つです。生命保険の死亡保険金は相続財産として扱われますが、一定額まで非課税となるため、相続税の負担を軽減することができます。また、現金で受け取れるため、相続税の支払いに充てることができるなど、さまざまなメリットがあります。

    生命保険の活用法

    ・非課税枠の活用

    生命保険の死亡保険金には、法定相続人 1 人あたり 500 万円の非課税枠があります。この非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減することが可能です。例えば、法定相続人が3人いる場合、1,500万円までの死亡保険金が非課税となります。

    ・相続税の支払い資金として

    相続財産が不動産などの現物資産に偏っている場合、相続税の支払い資金を確保することが課題となります。生命保険金は現金で受け取れるため、相続税の支払いに充てることができ、資産の売却を避けることができます。

    ・受取人を指定するメリット

    生命保険は、契約者が指定した受取人が直接受け取ることができるため、遺産分割協議の対象外となります。これにより、特定の相続人に確実に財産を渡すことができるため、遺産分割に関するトラブルを避けることが可能です。

    8.不動産の処分や活用を考える

    相続財産に不動産が含まれる場合、その扱いについて早めに考えることが重要です。不動産は価値が大きく、相続税の対象にもなるため、処分や活用の計画を立てることで、相続時の負担を軽減することができます。

    不動産の処分

    ・売却の検討

    不動産を相続する予定がなく、相続税の負担が大きい場合は、早めに売却を検討することが有効です。売却によって得た資金を他の財産に分配することで、相続人間の公平性を保つことができます。また、相続税の支払い資金としても活用できます。

    ・家族間の贈与

    不動産を家族間で贈与することで、相続税の対象を減らすことができます。ただし、贈与税が発生するため、その点に留意する必要があります。また、贈与後も適切な管理が求められるため、贈与後の維持管理についても計画を立てておくことが重要です。

    不動産の活用

    ・賃貸経営

    相続財産として不動産を所有し続ける場合、賃貸経営を行うことで、安定した収入を得ることができます。賃貸収入は相続財産とは別に家計を支える手段となり、相続人にとってもメリットがあります。ただし、賃貸経営にはリスクも伴うため、十分な市場調査と計画が必要です。

    ・共有名義のリスク回避

    不動産を複数の相続人で共有名義にする場合、将来的な管理や売却の際にトラブルが発生することがあります。できるだけ共有名義を避け、相続人ごとに分割したり、特定の相続人に引き継がせる形を検討することがリスク回避につながります。

    9.相続税の申告と納税を準備する

    相続税の申告と納税は、相続開始から10ヶ月以内に行う必要があります。期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため、早めに準備を始めることが大切です。

    申告準備のポイント

    ・申告が必要な場合の確認

    基礎控除額を超える財産がある場合は、相続税の申告が必要です。税理士に依頼し、正確な財産評価と税額の試算を行い、必要書類を準備します。

    ・申告書の作成と提出

    税理士の指導のもと、相続税申告書を作成し、税務署に提出します。申告書には、相続財産の詳細や控除・特例の適用内容を記載する必要があります。

    ・納税資金の確保

    相続税の納税は現金で行う必要があるため、納税資金の確保が重要です。生命保険金や不動産の売却など、現金化可能な資産を活用して、納税資金を用意します。

    まとめ

    相続対策は、一朝一夕にできるものではなく、時間と計画が必要です。まずは家族との話し合いを行い、資産の現状を把握し、専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めていくことが重要です。遺言書の作成や生前贈与、保険の活用など、多岐にわたる対策を講じることで、相続時のトラブルや負担を軽減し、円満な相続を実現することができます。定期的な見直しと、専門家との連携を通じて、最適な相続対策を進めていきましょう。