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相続税対策に大きな変化!暦年贈与の持ち戻し期間が 3 年から 7 年へ―90 歳の親の相続をどう考えるか
はじめに
「相続税対策は贈与から」とよく言われます。毎年 110 万円まで非課税で贈与できる暦年贈与や、一度に大きな財産を移せる相続時精算課税制度は、多くのご家庭で検討されてきました。しかし、2024 年の税制改正によって大きなルール変更がありました。それが、暦年贈与の持ち戻し期間が 3 年から 7 年に延長されたという点です。
特に 90 歳前後の高齢の親を持つご家庭にとって、この改正は「もう暦年贈与では節税が難しいのでは?」という不安につながるでしょう。本記事では、改正内容をわかりやすく解説し、実際にどのような相続対策をすべきかを整理していきます。
暦年贈与とは?
暦年贈与は、毎年 1 月 1 日から 12 月 31 日までの間に行う贈与で、年間 110 万円までが非課税になる制度です。たとえば親から子へ毎年 100 万円を贈与しても贈与税はかかりません。
ただし、この制度には「持ち戻しルール」があります。相続が発生する直前に贈与をして税金逃れをすることを防ぐため、これまでは相続開始前 3 年以内の贈与分は相続財産に戻して課税されていました。
2024 年改正で「3 年 → 7 年」に延長
2024 年 1 月 1 日以降に行われる贈与から、この持ち戻し期間が 3 年から 7 年に延長されました。つまり、被相続人が亡くなる前 7 年間の贈与は原則として相続財産に含めることになります。
経過措置もあり
ただし、いきなり 7 年分すべてを対象とするわけではありません。2024 年以降の贈与について、段階的に適用範囲が広がり、最終的に 2031 年以降の相続から完全に 7 年ルールが適用されます。
相続時精算課税制度とは?(わかりやすい解説)
相続時精算課税制度は、親や祖父母(60 歳以上)から子や孫(18 歳以上)へ贈与する場合に利用できる特別な仕組みです。特徴を整理すると次の通りです。
- 非課税枠は 2,500 万円まで
例えば、不動産やまとまった現金を 2,500 万円まで一度に贈与しても、贈与税はかかりません。 - 超えた部分は一律 20%課税
2,500 万円を超えた場合、贈与税はかかりますが、税率は一律 20%とシンプルです。 - 相続時に合算
贈与した財産は相続時に「相続財産」として合算されます。つまり、贈与時に節税できても、相続時に再計算されるため「節税効果は限定的」です。 - 一度選ぶと変更不可
相続時精算課税制度を一度利用すると、その人からの贈与についてはずっとこの制度が適用されます。 - 2024 年改正で暦年贈与の 110 万円非課税と併用可能に
以前は暦年贈与の非課税枠が使えませんでしたが、改正により毎年 110 万円までの贈与を同時に非課税扱いにできます。ただし申告が必要です。
この制度は、例えば「不動産を早めに子へ移したい」「株式の値上がり益を子に渡したい」というときに効果的ですが、結局は相続時に合算されるため、税額を減らすよりも“資産移転を早めに行う”という意味合いが強い制度です。
90 歳の親の場合、どちらを選ぶべきか?
暦年贈与の難しさ
- 持ち戻し期間が 7 年になったため、実際にはほとんどの贈与が相続財産に戻る。
- 「節税効果」を狙うのは現実的に難しい。
相続時精算課税制度の難しさ
- 結局は相続時に合算されるため、税額を大きく減らす効果は期待しにくい。
- 90 歳から新たに利用しても、制度の恩恵を長期間活用できるわけではない。
それでも意味があるケース
- 贈与を通じて「誰にどの財産を渡すか」を明確にしておくことは、争族防止につながる。
- 生前に少しでも財産を動かしておくことで、子どもや孫が将来の資金計画を立てやすくなる。
90 歳からの現実的な相続対策
税制上のメリットは限定的であるものの、90 歳からでも取り組むべき相続対策はあります。
- 遺言書の作成
誰にどの財産を渡したいのかを明文化することが最優先。遺言書は税金以上に「相続トラブル」を防ぎます。 - 生命保険の活用
生命保険金には「500 万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。これを利用すれば現金を効率よく渡せます。 - 生前贈与は“意思表示”の意味合いで活用
節税効果は薄くても、子や孫への「思い」を伝える手段として活用できます。 - 財産の棚卸しと見える化
不動産や預貯金、株式などの財産をリスト化し、家族と共有することが大切です。
まとめ
2024 年の税制改正により、暦年贈与の持ち戻し期間は 3 年から 7 年へ延長されました。高齢の親が行う暦年贈与は、節税効果を期待するのが難しい時代に入りました。一方で、相続時精算課税制度との併用が可能になり、贈与の選択肢は広がりましたが、90 歳という年齢を考えると「税金対策」よりも「相続対策=争族防止」に重きを置くべきです。
- 遺言書の作成
- 生命保険の活用
- 財産の棚卸し
これらを優先して取り組むことが、結果として家族の安心につながります。









