自筆証書遺言と公正証書遺言を比べた場合、被相続人が亡くなられた後の手続きはどちらが面倒?

    遺言書は、被相続人が亡くなった後の遺産分割を円滑に進めるための重要な文書です。日本では主に自筆証書遺言公正証書遺言の2種類が選ばれますが、それぞれの形式には作成時や相続開始後の手続きに大きな違いがあります。特に、被相続人が亡くなった後の手続きのしやすさについて、どちらがより簡便であるのかを詳しく見ていきましょう。

    自筆証書遺言とは?

    自筆証書遺言は、被相続人が自分自身で全文を手書きして作成する遺言書です。作成にあたり費用がほとんどかからず、手軽に準備できるという利点があります。しかし、作成時の形式不備や保管方法の問題、そして相続開始後の手続きの煩雑さが課題となることがあります。

    自筆証書遺言の主な特徴

    メリット

    • 作成が簡単で費用がほぼゼロ。

    • 手軽にいつでも作成・修正可能。

    デメリット

    • 形式不備のリスクが高い(全文手書き、日付、署名、押印が必要)。

    • 紛失や改ざんのリスクがある。

    • 作成後の保管方法によっては相続人に発見されない可能性がある。

    自筆証書遺言の手続きの煩雑さ

    被相続人が亡くなった後、自筆証書遺言を有効にするためには、以下のような手続きが必要です。

    1. 家庭裁判所での検認

    • **原則として家庭裁判所で「検認」**を受ける必要があります。

    • 検認は遺言書の形式を確認し、改ざんや偽造を防ぐための手続きです。

    必要書類

    • 被相続人の戸籍謄本

    • 遺言書

    • 相続人全員の戸籍謄本 など

    手続き期間:数週間から数カ月程度かかる場合があります。

    2. 形式不備がある場合のリスク

    • 検認の際に形式不備が見つかると、遺言書が無効になる可能性があります。

    • その場合、相続人間で改めて協議する必要が生じます。

    3. 保管方法の問題

    • 遺言書が適切に保管されていない場合、相続人が見つけられず、検認手続きに時間を要することがあります。

    **※2020年施行の「自筆証書遺言保管制度」**を利用すると、法務局で遺言書を保管することができ、検認手続きが不要になるため、一定の手間が軽減されます。

    公正証書遺言とは?

    公正証書遺言は、公証人が関与して作成される遺言書です。公証役場で手続きするため、作成時に手間と費用がかかりますが、相続開始後の手続きがスムーズになるのが特徴です。

    公正証書遺言の主な特徴

    メリット

    • 公証人が内容を確認するため、形式不備のリスクがない。

    • 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがない。

    • 相続開始後に家庭裁判所での検認が不要。

    デメリット

    • 作成時に費用がかかる(公証人手数料)。

    • 作成には証人2名が必要。

    公正証書遺言の手続きの簡便さ

    公正証書遺言を利用することで、相続開始後の手続きが以下のように簡便になります。

    1. 検認が不要

    • 公正証書遺言は公証人が内容を確認した上で作成されているため、家庭裁判所での検認手続きが不要です。

    • これにより、相続人の負担や手続きにかかる時間を大幅に軽減できます。

    2. 法的効力が高い

    • 遺言内容に基づいて速やかに遺産分割や名義変更が進められる

    • 不動産の相続登記や銀行口座の凍結解除などがスムーズに行えます。

    3. 原本の保管が安全

    • 公正証書遺言の原本は公証役場で厳重に保管され、相続人が必要に応じて謄本を取得できます。

    • 遺言書が見つからない、あるいは改ざんされるリスクがありません。

    自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

    項目自筆証書遺言公正証書遺言
    作成時の手間少ない多い
    作成時の費用ほぼ無料公証人手数料が必要
    保管の安全性紛失・改ざんリスクがある公証役場が原本を保管するため安全
    相続開始後の検認必要(保管制度利用時は不要)不要
    形式不備のリスク高い(無効になる可能性あり)ほぼない
    相続人の負担検認や不備の対応で負担が大きい手続きがスムーズで負担が軽い

    結論

    被相続人が亡くなった後の手続きにおいて、圧倒的に面倒なのは自筆証書遺言です。特に、家庭裁判所での検認手続きが必要な点や、形式不備による無効リスクが高い点が相続人にとって大きな負担となります。

    一方で、公正証書遺言は作成時に手間と費用がかかるものの、相続開始後の手続きが非常にスムーズで、相続人の負担を軽減できます。特に、遺産分割が複雑であったり、相続人間での争いが予想される場合は、公正証書遺言の利用を検討する価値が高いでしょう。遺言書を選ぶ際は、被相続人自身の状況だけでなく、相続人の負担も考慮しながら慎重に判断することが重要です。