跡継ぎがいない建設業者…どうしよう？

1. なぜ跡継ぎ問題が重要なのか？

建設業は、個人や家族経営が多いことから、経営者の年齢が上がると後継者問題が顕著に表れます。長年の経験とスキルを有する建設業者にとって、後継者がいないことで事業が継続できなくなるリスクは、地域経済にも大きな影響を与える可能性があります。また、事業承継がうまくいかない場合には、取引先や従業員にも影響が及び、業界全体にもマイナスの影響が及ぶ可能性があります。そのため、後継者がいない場合であっても、何らかの対策を講じることが重要です。

2. 跡継ぎがいない建設業者が考えるべき選択肢

跡継ぎがいない建設業者が取り得る選択肢はいくつかあります。以下のような方法が考えられます。

• (1) 他企業へのM&A（事業譲渡）

後継者がいない場合、他の建設会社や異業種企業に事業を譲渡する「M&A」は有効な手段です。M&Aにより、企業としてのノウハウや技術が引き継がれ、従業員も引き続き雇用が維持される可能性があります。さらに、買い手企業にとっても新たな市場に進出するチャンスとなるため、双方にとってメリットがあります。M&Aの進め方としては、M&A仲介会社や専門家のサポートを受けることが一般的です。事業の適正な価値評価や法的手続きの支援も得られるため、スムーズに進行できます。

• (2) 従業員への引き継ぎ

後継者がいなくても、信頼できる従業員がいる場合、その従業員に事業を引き継ぐ方法も考えられます。従業員承継は、特に企業文化や技術が引き継がれやすく、社内の雰囲気や取引先との関係も保ちやすいメリットがあります。また、会社にとっても従業員にとっても、なじみのある環境での承継が可能です。ただし、従業員が経営者としてのスキルや意識を持つことが重要であり、経営ノウハウの教育や支援が必要となります。経営のための研修やサポート体制を整えながら少しずつ引き継ぎを進めていくとよいでしょう。

• (3) 第三者への譲渡（ファンドや個人）

他の方法として、ファンドや個人に譲渡する方法もあります。後継者不在の問題は建設業界全体の課題と認識されており、地域活性化を目指すファンドや事業家に引き継ぐ例も増えています。また、若手の経営者や企業家が新たに経営に挑戦する意欲を持つ場合もあります。この場合、事業の将来性が評価され、事業が再生や成長を遂げることが期待されます。

• (4) 最後の手段としての廃業

事業を継続できる選択肢が見つからない場合、廃業も一つの選択肢です。建設業には許可や登録が必要で、廃業の際には行政への手続きも必要です。また、取引先や顧客、従業員に対する影響を最小限に抑えるために、廃業計画を立て、段階的に進めていくことが重要です。事業資産の整理や従業員の再就職支援、契約解除の手続きなど、廃業に関わる作業は計画的に進めることで、トラブルを防ぎ、円滑な退場が可能となります。

3. 将来を見据えた準備と計画の重要性

跡継ぎ問題を抱える建設業者にとって、事業承継や廃業の計画は時間をかけて進めるべき課題です。特に建設業界では、技術や資格の承継がスムーズに進まない場合、現場が混乱するリスクが高いため、早期からの準備が重要です。例えば、後継者を育成するための計画を立てることや、M&Aの可能性を探ることで、将来の選択肢を増やすことができます。また、廃業を検討する場合でも、取引先や顧客との関係が保たれるように配慮し、スムーズな移行を図ることが大切です。

4. 支援制度や専門家の活用

近年、後継者問題に直面する中小企業向けに、さまざまな支援制度が提供されています。特に国や自治体の中小企業向けの支援プログラムを利用することで、経営者が後継者不在という課題に立ち向かうための具体的なサポートが受けられます。例えば、中小企業庁が実施する「事業引継ぎ支援センター」など、後継者問題に特化したサポートを提供する機関もあります。こうした支援制度を活用することで、最適な解決策を見つけることが可能です。

また、専門家（税理士や行政書士、弁護士など）のサポートを受けることで、法的な手続きや税務面での負担を軽減することができます。事業承継には税金の問題も関わるため、専門家のアドバイスを受けることでスムーズに進めることができるでしょう。

5. 跡継ぎ問題を見据えた今後の展望

跡継ぎがいない建設業者にとって、事業承継の課題は決して避けられるものではありません。むしろ、早めに対策を講じ、周囲のサポートを受けることで、円滑な事業承継や撤退が可能となります。経営者としての豊富な経験やノウハウを後世に引き継ぎ、建設業界の発展に貢献するためにも、今後も後継者問題に対して積極的に取り組むことが大切です。

今の状況でこそ、跡継ぎ問題に向き合い、事業の未来を見据えて最適な道を選ぶことが、企業としての次のステージへとつながるでしょう。