建設業の人手不足問題：現状と課題

2024年11月8日

1. はじめに

建設業界は長年にわたり人手不足に悩まされてきました。日本全国でインフラ整備や老朽化した施設の改修が急務となっている中で、人手不足は深刻な影響を及ぼしています。特に、技術を持つ熟練労働者の不足や若年層の建設業への関心の低下が、業界の未来を左右する大きな問題となっています。

建設業界の人手不足の原因には、複数の要因が絡み合っています。

• 高齢化: 建設業界では、従事者の平均年齢が年々上昇しており、60歳以上の労働者が増加傾向にあります。若い世代の参入が少ないため、熟練労働者が退職すると同時に技術の継承が難しくなっています。

• 若年層の離職率の高さ: 建設業は肉体的にも精神的にも厳しい業界と見なされがちで、若年層の定着率が低いことが課題です。待遇改善が求められる一方で、業界全体のイメージ向上も急務となっています。

• 人口減少: 少子化により、労働人口が減少しており、他の業種と競合して若年労働者を確保するのがますます難しくなっています。

建設業における人手不足は、様々な面で影響を及ぼしています。

• 工期の遅延: 人員が足りないために工事が予定通りに進まず、プロジェクトが遅延するケースが増えています。これは公共工事のみならず、民間のプロジェクトにも波及しており、社会インフラの整備に遅れが生じています。

• コストの上昇: 労働者の確保が難しいため、業者間で賃金が上昇し、それが全体のコストに跳ね返っています。加えて、熟練工が不足することで品質の維持が難しくなり、修繕や改修が必要になるリスクが高まります。

• 安全性のリスク: 経験の浅い作業員が増えることで、安全性が確保されにくくなります。適切な技術指導が行き届かない場合、事故のリスクが高まりかねません。

人手不足問題の解決に向けて、様々な取り組みが進められています。

• 待遇改善: 業界全体で賃金を見直し、福利厚生を充実させることで、若年層の離職率を低減する動きが見られます。また、労働時間や労働環境の改善も重要なポイントです。

• 外国人労働者の受け入れ: 技能実習制度や特定技能制度を活用し、外国人労働者を積極的に受け入れる動きも進んでいます。ただし、外国人労働者に対する適切なサポート体制が必要です。

• ICT技術の導入: ICT（情報通信技術）の活用により、業務の効率化が図られています。特に、ドローンによる測量や、AIによる施工管理システムが普及し始め、労働力の不足を補う効果が期待されています。

• 若年層へのアプローチ: 学校や教育機関と連携し、建設業の魅力を伝えるための啓発活動が行われています。職場体験やインターンシップなどを通じて、若い世代に建設業の可能性を感じてもらう取り組みも重要です。

今後、日本の建設業界が成長し続けるためには、労働力の確保と技術の継承が欠かせません。人口減少の中で人材確保が難しい状況は続きますが、ICT技術のさらなる進化や、外国人労働者の適正な受け入れにより、人手不足の解消が期待されています。

建設業界の人手不足問題は、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、待遇改善やICTの導入、外国人労働者の受け入れといった様々な取り組みにより、持続可能な成長が可能となるでしょう。今後も業界全体で連携し、次世代の労働力を確保しつつ、建設業の未来を築いていくことが求められています。