【10 年働いても証明できなきゃ意味がない!?】建設業許可「専任技術者」実務経験 10 年の壁!

    「うちの職長はもう 15 年も現場で働いてるから大丈夫でしょ!」

    そんな社長のひと言に、行政書士は頭を抱える…。

    建設業許可申請の「専任技術者」の要件の一つに、10 年以上の実務経験があります。

    これは、資格を持っていない人が許可取得を目指す際の頼みの綱とも言える要件ですが――。

    「10 年働いた」ことと「10 年働いていたと証明できる」ことはまったく別問題。

    今回は、建設業許可を目指す上でしばしば最大の障壁となる「10 年実務経験の証明の難しさ」について、事例も交えてリアルに解説します。

    ■ 専任技術者ってなに?

    まず前提として、建設業許可を取得するには、営業所ごとに「専任技術者」を設置する必要があります。

    この専任技術者は、その業種の工事を行うための専門知識と経験を持った責任者であることが求められます。

    資格を持っている人(1 級・2 級施工管理技士など)はスムーズですが、資格がない場合は、実務経験だけでも専任技術者になることが可能です。

    ■ 実務経験 10 年で OK…ただし「証明できれば」

    「資格はないけど、現場で 10 年以上経験積んできた!」

    これは立派なキャリアですが、それを建設業許可の世界では証拠をもって“見える化”しなければなりません。

    つまり、以下のような書類をそろえて「本当に 10 年以上、該当する業種の工事に従事していた」ことを証明する必要があります。

    ■ 必要な証拠とは?

    • 契約書・注文書・請求書など工事実績のわかるもの
    • 工事写真、図面、施工報告書
    • 給与明細・源泉徴収票
    • 雇用契約書、在籍証明書、勤務証明書
    • 工事経歴書や業務内容の一覧表(様式あり)

    実際の申請では、「〇〇工事を、いつ・どこで・誰の指示で・どのようにやっていたか」を、年ごとに分かるように一覧で提出する必要があります。

    ■ 【事例】証明資料が揃わず不許可に…ある鉄筋工の話

    東京都内で 15 年以上現場監督として働いてきた A さん。

    地元の建設会社に長年勤務し、独立して自ら建設業許可を取ろうと考えました。

    ところが、元勤務先の社長がすでに廃業しており、勤務証明書を発行してもらえず。

    さらに、自身が携わった工事の契約書なども手元に残っていませんでした。

    残っていたのは古い作業着の写真と、数枚の工事現場の画像のみ。

    行政書士とともに提出書類を整えたものの、経験年数を客観的に証明できず、不許可に。

    「これだけ現場で働いてきたのに、書類がないだけで認めてもらえないのか…」というのが A さんの本音でした。

    ■ なぜ証明が難しいのか?

    1. 中小企業では記録が残っていない
      → 小規模業者では契約書や実績台帳が残っておらず、請求書だけ…なんてことも。
    2. 元雇用主と連絡が取れない
      → 廃業・倒産・音信不通などで勤務証明書が出せないケースが増えています。
    3. 個人事業での経験が曖昧
      → 個人事業で下請けとして働いていた場合、誰と契約していたのか明確でないことが多い。
    4. 写真や日報だけでは足りない
      → 写真に写っているからといって、誰が何をしていたかまではわからない。補助的資料にしかならないのです。

    ■ 実務経験の「業種対応」も落とし穴

    たとえば、「とび・土工工事業」の許可を取りたいとします。

    この場合、該当するのは“足場仮設”“掘削”“コンクリート打設”等で、たとえば塗装工事ばかりやってきた人は、経験年数として認められません。

    「建設業の現場にいた=なんでも OK」ではなく、業種ごとにピンポイントで証明する必要があります。

    ■ どうやって突破するか?実務経験 10 年証明のコツ

    • 工事実績の年表を作る
      → 年ごとに主な現場名、工期、内容、元請業者を一覧にまとめる。
    • 契約書や請求書はコピーして残す
      → 元請からの請求書、注文書は非常に有力な証拠。
    • 在籍証明書や勤務証明書は早めに確保
      → 雇用されていた会社が健在なうちに取り寄せておくのが得策。
    • 第三者証明を活用
      → 証拠が不足しているときは、元請や取引先からの「工事証明書」も使えることがあります。

    ■ 最後に:職人の経験に“証拠”を添えて

    建設業界には、腕の立つ職人・現場監督が数多くいます。

    しかし建設業許可という制度においては、「経験をどう証明するか」が命です。

    「現場の経験が足りない」のではなく、

    「証明資料が足りない」ことで夢を断たれるのは本当にもったいない。

    もしあなたが「資格はないけど、10 年以上現場でやってきた」という方なら、

    今すぐにでも資料を整理し、証拠の収集を始めましょう。

    そして、証明のプロである行政書士などに相談することで、あなたの経験が書類という形で“見える化”され、

    晴れて「専任技術者」としての道が開けるのです。

    建設業許可取得のための実務経験証明に不安がある方へ

    実績の棚卸しから書類作成のアドバイスまで、専門家がサポートします。

    あなたの 10 年の経験を、確実な一歩へとつなげましょう。